JACCRO e-Journal no.3(2007/09) |
2007年ASCOに参加して
広島大学 原医研腫瘍外科
吉田 和弘
今年の2007 ASCO annual meetingは、2007年6月1日から5日まで米国イリノイ州シカゴで開催された。 北米の交通の要所であるシカゴで開催されたとあって、世界中から例年より多くの参加者があったようで、日本からの参加者も多く見うけられた。 会場はシカゴ中心部のやや南側で、ミシガン湖に面したMcCormick Placeという巨大なコンベンションセンターであり、端から端まで移動するのにかなり時間を要したが、どこに行っても人があふれており、会場全体が熱気に包まれていた。
さて、われわれ日本の消化器腫瘍医にとって今年のASCOで最も印象に残ったのは、第3日目の午後のセッションでわが国の胃癌臨床試験の結果が、 多くの聴衆のなか広い口演会場で2題続けて発表されたことであろう。 静岡県立静岡がんセンター 朴先生はJCOG9912試験の結果を発表し、切除不能・再発進行胃癌に対する5-FU、CP療法、S-1単独療法の比較第V相試験の結果、 非劣性が証明され毒性が軽微であったS-1単独療法がこれらの胃癌に対する標準治療に位置付けられると結論した。 続けて講演した広島大学楢原先生は、同様に切除不能・再発進行胃癌を対象とし、S-1単独療法とS-1+シスプラチン併用療法の比較第V相試験(SPIRITS試験)の結果を報告し、 S-1+シスプラチン併用療法が進行胃癌の標準first-line治療となりうると結論づけた。 しかしながら、続けて行われたDiscussionの中でDr.Mayerは、S-1の良好な治療成績に非常に高い関心を示しつつも、 日本人と欧米人の代謝の違いもありS-1を含めたレジメンが標準治療と考えるのは時期尚早であるとのやや辛口のコメントであった。
同じセッションでは、胃癌に先立って食道癌・食道胃接合部癌に関する3題の発表が行われた。 いずれも術前治療に関する演題で、フランスのDr.Boigeらは切除可能下部食道・接合部・胃の腺癌を対象とし、術前にシスプラチン+5-FU併用療法群が無病生存率(DFS)、全生存率(OS)ともに手術単独群を上回ったと述べた。 また、Dr.Thirionらは切除可能な食道腺癌における術前化学療法施行群 vs 手術単独群のmeta-analysisを行い、DFS、OSともに術前化学療法施行群が良好であったと報告した。 一方、ドイツのStahlらのグループは、進行下部食道・接合部腺癌を対象とした術前化学療法群と術前化学放射線療法群の比較比較第V相試験を行い、術前化学放射線療法群で3年OSが良好であったが有意差までは至らなかったと報告した。 食道扁平上皮癌の多いわが国とは多少事情が異なるが、少なくともこの領域の腺癌においては術前化学療法が治療成績の向上に寄与すると考えられる。
シカゴは街全体が高層ビルの展覧会場のようなもので、歴代の建築家たちが工夫をこらした個性的な建物が多く、街を散策していても退屈しない。 また、ブルース発祥の地としても知られており、町中には多くのライブハウスがある。 学会の合間にこれらの音楽に接することができたのも大変有意義であった。

