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活動報告

■2010年 JACCRO学術集会

UPDATE : 2010/07/05

2010年 JACCRO総会に引き続き、学術集会を開催した。
 今年は、国立がんセンター東病院の大津敦先生による「胃癌分子標的治療開発の現状と問題点」のテーマで講演された。
 進行胃癌化学療法における、過去10年間の総括では新規薬剤導入(S-1,taxane)では、MSTが7ヶ月~13ヶ月に延長したこと、現在胃癌に有効な薬剤は4剤あり、この4剤の枠組みでは治療成績に限界があり、新規有効薬剤が必要である。また、胃癌分子標的治療薬の開発状況では、HER family阻害剤の開発状況、PI3K/Akt-mTOR Pathwayの阻害剤など分類別にデータと現状の紹介、さらに早期開発中の薬剤では阻害部位別に多数の薬剤について紹介があった。
 胃癌分子標的治療の現状は、①トラスツズマブ+FUs/CDDPはHER2陽性胃癌の新しい標準治療になりうる、②ベバシズマブの生存延長効果は証明されなかった、③他のがん種で効果が証明されたラパチニブ、エベロリスムの比較試験が進行中である、④e-met,hisp90,PI3K-Akt,hedgehog/SMOなどの阻害剤の早期開発治験が進行中である、⑤適格な分子標的の選別による個別化の方向性が進むと予想される、とのことだった。
あわせて、薬剤の承認基準、企業の治験と臨床研究並びに高度医療について実施体制の違いの解説と、術後Adjuvant臨床試験の問題点にも触れられていた。

今後の胃癌の治療方法を示唆する情報が提供され、出席者は熱心に、一部はメモを取る姿が見られた。講演終了後、広範なまとめに対する謝辞とともに、今後の薬剤承認等、多くの質問がなされた。非常に有意義な内容であり、出席した先生方にとって大いに役立ったと思われる。

■第82回 日本胃癌学会 イブニングセミナー開催される。

UPDATE : 2010/06/23

 今年3月3日から5日まで新潟市で第82回日本胃癌学会が開催されたが、その第2日目の夕方にJACCROの提供によるイブニングセミナーが開催された。

 セミナータイトルは近年、胃の集団検診の分野で話題になっている「胃癌の早期発見から予防へ」で、日本胃がん予知・診断・治療研究機構の三木一正理事長が座長を務めた。 また講演者は、P.Varzim/V.Conde HospitalのDr. Paphael Lomba Vianaと愛知医科大学の菊地正悟教授であった。

 このセミナーの狙いは胃癌の集団検診を如何に効率的に、また経済的に行うかという観点に立って、Pepsinogen testとHelicobacter pylori(以下H. pylori)の最近の知見を紹介するものであった。 二人の講演者に続いて座長の三木先生も討論に加わり、Pepsinogen testとH.pyloriの検査結果から胃癌のhigh risk groupの選別が可能であり、これらのグループに焦点を絞って集団検診を行えば、費用の削減と胃癌発見率の向上に役立つというものである。 このhigh risk groupとは、H.pylori(+)とpepsinogen test(-)のグループが最も胃癌発生率が高く、ついで両テストが(+)のグループである。

 これらの知見は胃癌の治療に従事している医師にあまり知られておらず、講演会に参加した聴衆の間からも熱心な質問、討論が行われ、イブニングセミナーは成功裡に閉幕した。

お二方の抄録を以下に示しました。



Dr.Lomba Viana,R.;Fonseca,F.;Vieira ,A.S. (P.VARZIM/V.CONDE HOSPITAL - PORTUGAL )
<SERUM PEPSINOGEN TEST IN GASTRIC CANCER SCREENING IN PORTUGAL.PRELIMINARY>


INTRODUCTION: PORTUGAL is the most occidental European Country with the highest incidence and mortality by gastric cancer and North Region is the most reached. The gastric cancer decline has been slight in Portugal. About 90% of Portuguese population presents H.pilory infection. Serum pepsinogen (PG) test is recognized in Japan and is specially good at screening asymptomatic subjects. So, we are starting a pilot study using pepsinogen test.in gastric cancer screening in North of Portugal.

MATERIAL AND METHODS:From June 2005 to October 2008,9777 subjects were observed, age 40-79 years old (4028 male, median age 59.6 years, and 5749 female, median age 58.9 years). Fasting blood samples were collected and measurements of the serum pepsinogen concentrations was carried out by Biohit-Elisa kits. We used the cut off levels of the pepsinogen proposed by Miki (PGI ≤ 70µ / l and PG I / PG II ratio ≤ 3). According to this cut off levels the participants were classified in two groups: positive and negative. Positive group and a sample of negative group were submitted to upper endoscopy with biopsy.

RESULTS: we found 334 PG positive cases and 201 were submitted to endoscopy. We found four intestinal type gastric cancer in one man and three women. All them without symptoms. We also studied 240 negative PG cases, submitted to endoscopy and we found two false negative. The H. pylori infection was more times negative in subjects with positive PG.

CONCLUSION: despite short time of observation, this study showed that the risk of gastric cancer increase when the PG test is positive independently of H.pylori infection and the absence of the symptoms This study has been supported by Portuguese Rotary North Clubs and PV/VC Hospital



菊池 正悟 先生(愛知医科大学 公衆衛生)
<これからの日本の胃癌予防>


 わが国の胃癌予防では、X線検査、内視鏡による胃癌検診、血清ペプシノゲン値やHelicobacter pylori(以下H. pylori)感染診断による胃癌リスクの判定という早期発見を目的とした方法が実際に行われている。 H. pylori 感染については、胃癌との因果関係が明らかにされ、除菌によってヒトでも胃癌が減少することが証明された。 このように、複数の予防方法が開発され実用できるが、どのような方法が最適であるかという点についての検討はあまりなされていないというのが現状である。
 発生そのものを予防する除菌による胃癌予防は理想的ではあるが、胃粘膜の萎縮が進んだ状況で除菌しても胃癌の発生はあまり減少しないことが明らかになっている。 また、胃症状の軽快や除菌したという安心から、必要な定期検査の受診率が低下することが問題となっている。 このように、それぞれの予防方法には長所短所がある。
 一方で、わが国では若い年代の胃癌罹患(発生)率が減少している。これは、H. pylori感染の減少によると考えられ、30年前後でわが国の胃癌罹患率は欧米先進国並みになることが予想されている。
 複数の予防方法が実用でき、胃癌罹患率が減少していくという状況の中で、早急に最もわが国に適した胃癌予防の体系を構築していくことが、わが国に今求められている課題である。
 除菌や各検診方法のコンプライアンスを含めた長所短所を比較検討し、受診者の利益や効率という面から当面最適と考えられる胃癌予防の体系を提案する。骨子は、血清ペプシノゲン値、H. pylori 感染診断による個々人の胃粘膜の状態や胃癌リスクの把握とそれに応じた除菌もしくは経過観察、小児期でのH. pylori 感染の予防である。将来的に予想される変化に対して、どのように対策を変化させていくべきかについても検討する。

■2009年 JACCRO学術集会

UPDATE : 2009/10/01

2009年 JACCRO総会に引き続き、学術集会が開催されました。

初めに、防衛医科大学校の市川度先生から「臨床研究におけるコホート研究」のテーマでご講演いただき、介入研究と観察研究の違いや、エビデンスレベルからみたコホート研究の位置づけ、またBRiTE試験を例にコホート研究の手法についてお話いただきました。
次に、大阪医科大学の瀧内比呂也先生に「系統的、効率的臨床試験の進め方」のテーマでご講演いただき、胃癌におけるInter-group Studyの変遷についてお話いただくとともに、がんの集学的治療の早期開発の研究体制確立に関する研究班の動きをふまえた今後の展望などについてご講演いただきました。
更に特別発言として、がん集学的治療財団理事長の佐治重豊先生からInter-group Studyの問題点とその解決策、DMの育成事業。さらにはJACCROとのJoint Study案についてもお話いただきました。
これらのご講演は、JACCROの各先生方が臨床試験を計画・実施する上でとても有意義な内容であり、出席された先生方にとって大いに役立ったものと思います。

防衛医科大学校の市川 度先生、大阪医科大学の瀧内 比呂也先生の講演要旨を下記に掲載いたしました。

講演プログラム①
「臨床研究におけるコホート研究」
防衛医科大学校 腫瘍化学療法部
市川 度 先生


臨床研究は、介入研究と観察研究に分類される。観察研究のひとつであるコホート研究の手法によるがん薬物療法に関する論文が、最近、Journal of Clinical Oncologyに相次いで掲載された。コホート研究の長所としては、1)実地臨床のデータが得られる、2)無作為化比較試験と比べて、より多様な患者層における長期間の観察が可能である、3)実行しやすい、ことが挙げられるが、一方で、短所として、ランダム化が行われていないために背景因子の偏り(特に複数群を比較する場合)や交絡因子の問題がある。マッチングなどのpropensity scoreによる交絡の調整を行った場合には、結果的に“疑似ランダム化”を行うことも可能であるが、未測定因子は考慮できないことや重要な変数が含まれないと精度が低下するという問題も指摘されている。がん治療の分野でも、コホート研究の意義を再認識すべであろう。

講演プログラム②
「系統的、効率的臨床試験の進め方 ~胃癌におけるInter-group Study~」
大阪医科大学 化学療法センター
瀧内比呂也 先生


最近わが国から、胃癌のファーストラインに関する無作為化比較試験結果(RCT)が相次いで報告され、S-1+CDDPが標準的治療として位置付けられた。その後多くの臨床試験グループが、セカンドライン治療に注目し、多くのRCTが実施されている。これは各臨床試験グループの成熟を意味するものかもしれない。しかしその一方で、これら臨床試験における問題点も明らかとなり、我が国全体の問題として解決すべき点もある。限りあるリソースを有効利用して、いち早く患者サイドに標準的治療を届けるためには、各臨床試験グループの情報共有が今後より一層必要となろう。また国際的に今後も胃癌治療をリードしていくためには、各グループ間の役割を明確にし、必要に応じてInter-group Studyを行う必要がある。